トピックス

IBUKI通信[第6号]より情報をお届けいたします。2017年10月

ごあいさつ

 平素はライソゾーム病のパイロット検査にご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。お陰さまで、福岡県では、2014年7月に検査を開始し、福岡ブロック、筑豊ブロック、北九州ブロック、更に筑後ブロックの施設様からもご参加いただAき、2017年8月末現在、116施設へと拡大いたしました。検査開始に向けてご支援をいただきました福岡県産婦人科医会や分娩取扱い施設の皆様、更に検査を受けることに対してご理解をいただいた保護者の方々に心より感謝申し上げます。
 ライソゾーム病は、欠損する酵素の種類によりいろいろな症状を呈する疾患群であり、現在60種の疾患が含まれています。未治療では様々な臓器障害をきたしますが、酵素補充療法などが導入され、その予後は改善されています。しかし、成人になっても診断がつかず、対処療法のみが継続されている場合も少なくありません。中には何年もかけて病院をいくつも回り、やっと専門医にたどり着くような患者さんもおられます。
 患者さんが埋もれることなく検査で見つかり早期に適切な治療を受けることにより、日常生活におけるQOLが改善されることを願いつつ、検査状況の報告をさせていただきます。

NPO法人IBUKI理事長 廣瀨伸一(福岡大学医学部小児科 主任教授)

研修会のご案内

新生児スクリーニングの対象疾患の診断や治療の進歩は著しく、医療関係者における情報の交換がより必要とされています。本研修会は、新生児スクリーニングに関わる分野の最新の知識を分かりやすく解説し、同時に地域にお帰る新生児スクリーニング対象疾患の診断と治療を高めることを目的としています。

実施状況

福岡大学病院小児科
准教授井上 貴仁

 本検査は、福岡県産婦人科異界のご支援の下、4月からは新たに北九州ブロックや筑後ブロックの分娩取扱い施設様も検査を開始され、保護者の方々のご理解を得ながら、実施させていただいております。2014年7月に検査を開始以来、2017年8月末までに61,575名の新生児を検査いたしましたので、その状況を報告させていただきます。
 検査開始以来、ファブリー病スクリーニングでは精密検査が必要となった児は25名で、5名がファブリー病、6名は異常なしと診断され、10名が経過観察中、3名が精査中、1名が精密検査中止、という状況です。
 同様に、ポンペ病スクリーニングでは精密検査が必要となった児は36名で、27名が経過観察中、6名は異常なしと診断され、3名が精査中です。
 また、早期に診断できた患者様や経過観察中のお子様は、当院他にて適切にフォローされており、ご家族の安心にも繋がっていることに私共も意義を感じており、ご協力をいただいています皆様方には心より感謝申し上げます。

  • ファブリー病スクリーニング

    福岡県 研究項目受検査数 要精密数 確定数 発見頻度
    2014年度(7月~3月) 8,487 5 3 1/2,829
    2015年度(4月~3月) 15,725 9 1 1/15,725
    2016年度(4月~3月) 22,780 9 1 1/22,780

    2017年度(4月~8月)

    14,583 2 0 -

    患者発見頻度1/12,315(61,575名検査、5名発見)

  • ポンペ病スクリーニング

    福岡県 研究項目受検査数 要精密数 確定数 発見頻度
    2014年度(7月~3月) 8,487 8 0 -
    2015年度(4月~3月) 15,725 8 1※1 -
    2016年度(4月~3月) 22,780 13 0 -
    2017年度(4月~8月) 14,583 7 0 -

    ※1第3号(2016年4月)にて確定と報告しましたが、現在両親の精査並びに経過観察中

※検査に係る費用等の詳細は、かかりつけの産科医療機関にお尋ねください。

遺伝について

体質、性格、顔つきなど親から子へ伝わりますが、遺伝子に関するさまざまな病気も同様に遺伝子の変異として伝わります。
私たちの体は両親から1組ずつの遺伝子をもらい、一人当たり2組の遺伝子を持っています。その遺伝子のうち、相手方より特徴が出やすい遺伝子があれば、それは優性遺伝子と呼ばれ、特徴が出にくい遺伝子が劣性遺伝子です。
遺伝の仕方には、大きく分けて4つあります。常染色体優性遺伝、常染色体劣性遺伝、X連鎖性劣性遺伝、X連鎖性優性遺伝です。この中で、ファブリー病とポンペ病に関わる遺伝の特徴を紹介します。

X連鎖性劣性遺伝の特徴

「ファブリー病」

X連鎖性というのは、変異遺伝子がX染色体に乗っているものをいいます。情勢はXを2本持っています。男性はXとYを持っています。変異遺伝子を母親からもらった男性は、半分が症状を持つ可能性があります。
・父親から息子に遺伝することはあいrません。
・その病気の患者である男性から娘を介して、孫へ遺伝します。孫が男の子なら、その1/2が病気の可能性があります。
・保因者である女性には症状がないことがほとんどですが、何らかの兆候や症状を持つ人もいます。
ファブリー病は、ライソゾームに存在する加水分解酵素の一つであるα-ガラクトシダーゼ(α-Gal)の遺伝子変異により酵素活性の低下を生じ糖脂質が蓄積する先天代謝異常症ですが、α-Galの遺伝子変異はこれまでに500以上の報告があります。

常染色体劣性遺伝の特徴

「ポンペ病(糖原病2型)」

私たちが親からもらった遺伝子はペアなので、1個に変異があるとしても、もう片方の遺伝子がカバーして必要なタンパク質を作っているため問題は起こりません。
このような変異遺伝子は劣性遺伝子と考えられます。しかし、同じ部分に変異がある劣性遺伝子を持つ両親の間に、変異が2つ揃った子どもが生まれる場合があります。その場合には必要なタンパク質が作られないので症状が出ます。この両親に生まれる子では、25%(1/4)の確率で症状が出る可能性があいrます。
・子どもに症状が現れた場合、両親のどちらもその病気の保因者であると考えられます。
・男女差はありません。
・両親と他の親族に同じ症状を持つ人がいなくても、生まれてくる子どもだけが遺伝性疾患による症状を持つことがあります。
なお上記とは別に、ご両親からそれぞれ異なる変異を1個ずつ2箇所引き継ぐことで発症する事例もあると言われています。
ポンペ病は、ライソゾームに局在する酸性α-グルコシダーゼ(GAA)の酵素欠損あるいは活性低下によりライソゾーム内にグリコーゲンが蓄積する先天代謝異常症ですが、GAAの遺伝子変異は現在まで200以上の報告があります。

※日本遺伝学会と日本人類遺伝学会が協議して、「優性」は「顕性」、「劣性」は「潜性」など用語の改訂をされましたが、今回は分かりやすくするために従来の用語を使用させていただきました。

※検査に係る費用等の詳細は、かかりつけの産科医療機関にお尋ねください。