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IBUKI通信[第8号]より情報をお届けいたします。2018年10月

ごあいさつ

 平素はライソゾーム病のパイロット検査にご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。お陰さまで、福岡県では、2014年7月に検査を開始しましてから、2018年8月末現在、131の分娩取扱い施設様(福岡県内の97%)にご参加をいただいております。検査開始に向けてご支援をいただきました福岡県産婦人科医会や分娩取扱い施設の皆様、更に検査を受けることに対してご理解をいただいた保護者の方々に心より感謝申し上げます。検査開始以来、診断に至った患者様並びに経過観察中の子どもさんは専門施設にて適切にフォローされており、患者様やご家族の安心に繋がっていることに私共も意義を感じております。
 次のステップといたしまして、同じくライソゾーム病であり、比較的患者様が多く、かつ、酵素補充療養などの効果が期待できるゴーシェ病及びムコ多糖症1型・II型の3項目の検査を追加したく、現在、開始に向けた準備を行っております。これにより、更に多くの難病患者様を早期に発見することができ、早期治療による発症予防やQOLの改善効果が期待できます。尚、新たに追加する検査は、現在と同じく公費で行われている先天性代謝異常等他検査のろ紙の一部を使用しますので、赤ちゃんの採血負担が増えることはございません。
 検査項目追加の趣旨をご理解いただき、患者様が埋もれることなく検査で見つかり、早期に適切な治療を受けることを願いつつ、検査状況の報告をさせていただきます。

NPO法人IBUKI理事長 廣瀨伸一(福岡大学医学部小児科 主任教授)

実施状況

福岡大学医学部小児科
福岡大学西新病院小児科
准教授井上 貴仁

 本検査は、福岡県産婦人科異界のご支援の下、各分娩取扱い施設様のご協力と保護者の方々のご理解を得ながら実施させていただいており、契約施設における直近の検査希望率は94%程度となっています。2014年7月に検査を開始以来、2018年9月末までに99,078名の新生児を検査いたしましたので、その状況を報告させていただきます。
 検査開始以来、ファブリー病スクリーニングでは精密検査が必要となった児は35名で、8名がファブリー病、6名は異常なしと診断され、13名が経過観察中、7名が精査中、1名が精密検査中止、という状況です。
 同様に、ポンペ病スクリーニングでは精密検査が必要となった児は46名で、35名が経過観察中、6名は異常なしと診断され、5名が精査中です。
 また、早期に診断できた患者様や経過観察中のお子様は、当院他を定期的に受診され、ご家族の安心にも繋がっていることに私共も意義を感じており、ご協力をいただいています皆様方には心より感謝申し上げます。

  • ファブリー病スクリーニング

    福岡県 研究項目受検査数 要精密数 確定数 発見頻度
    2014年度(7月~3月) 8,487 5 3 1/2,829
    2015年度(4月~3月) 15,725 9 1 1/15,725
    2016年度(4月~3月) 22,780 9 1 1/22,780

    2017年度(4月~3月)

    36,229 10 1 1/36,229
    2018年度(4月~8月) 15,857 2 1 1/15,857

    患者発見頻度1/14,154(99,078名検査、7名発見)

  • ポンペ病スクリーニング

    福岡県 研究項目受検査数 要精密数 確定数 発見頻度
    2014年度(7月~3月) 8,487 8 0 -
    2015年度(4月~3月) 15,725 8 1※1 -
    2016年度(4月~3月) 22,780 13 0 -
    2017年度(4月~3月) 33,229 16 0 -
    2018年度(4月~8月) 15,857 1 0 -

    ※1 第3号(2016年4月)にて確定と報告しましたが、現在経過観察中

ライソゾーム病について

1.病気の概要

細胞の中には色々な役割をもった細胞内小器官といわれる器官があります。それには染色体を包んでいる核、エネルギーをつくるミトコンドリアなどがあります。その中で、細胞内でいらなくなったものを分解するのがライソゾームと呼ばれている小器官です。
ライソゾーム内に大量の脂質、糖質などを含む多量の物質が蓄積し、肝臓・脾臓の腫大、骨障害、中枢神経障害、腎障害、心障害などを含む種々の症状を呈する疾患群です。ライソゾームには何種類もの酵素があり、現在、約40種類位のライソゾーム病が知られていますが、稀なものまで含めると60疾患以上あるとされています。症状はそれぞれの疾患で異なりますが、共通点はライソゾームの中に分解されない老廃物が次第に蓄積し、年齢とともに次第に症状が進行し悪化するということです。

2.疫学

正確な頻度は分かっていませんが、新生児スクリーニングを行っているファブリー病、ポンペ病などでは、それぞれ数千人、3万人に1人とのデータがあります。ただ、稀な疾患であるため見逃されているケースが多いと思われます。尚、疾患の比率は研究班の調査により概ね右のグラフの通りだと思われます。

3.原因

殆ど全てのライソゾーム病で欠損している酵素は判明しており、血液で酵素活性を測定することで欠損を確認できます。また、その酵素を作っている遺伝子も殆どが判明しています。

4.遺伝

全てのライソゾーム病は遺伝性疾患です。基本的には常染色体劣性遺伝という遺伝形式で劣勢の遺伝子をもっている人(保因者)同士が結婚して、生まれる子どもの4人に1人が発症します。保因者は全くの健康ですから誰が保因者であるかは検査をしないと分かりません。
ファブリー病、ムコ多糖症II型、ダノン病はX連鎖性劣性遺伝形式で、保因者の女性が子どものを産んだ時、男の子の2人に1人が病気の因子を持つことになります。男性が病気の場合は、男児は正常、女児は全員が保因者となります。ファブリー病は、例外的で女性も発症することがあるためX連鎖性遺伝形式と呼ばれています。

5.症状

疾患により症状は大きく異なります。生まれてすぐは、ほとんどの場合、全く正常な赤ちゃんです。診察しただけでは、病気は全く分かりません。成長するにつれて、肝臓・脾臓の腫大、骨変形、神経障害(けいれん、知能障害、末梢神経障害など)、眼障害、腎障害、聴力障害、皮膚症状など種々な症状を呈し、また、重症度も様々です。同一家系内でも重症度が異なる場合があります。

6.治療

酵素補充療法が、ファブリー病、ポンペ病、ゴーシェ病、ムコ多糖症I型・II型・Ⅵ型、ウォルマン病(ライソゾーム酸性リパーゼ欠損症)で実施されています。酵素補充療法は臨床症状を改善し、更にその進行を抑制するため早期から治療を開始することが重要であり、新生児のますスクリーニング検査が有用となります。  造血幹細胞移植は中枢神経障害の発症が強く予測される場合はムコ多糖症などで試みられています。基質合成抑制薬がニーマンピックC型で承認されています。その他、シャペロン療法(ファブリー病)や遺伝子治療(胃染性白質ジストロフィー、ムコ多糖症II型)などの新しい治療法の開発も行われています。

出典:右記のホームページを参照しました。難病情報センターhttp://www.nanbyou.or.jp(2018年9月28日現在)

ライソゾーム病疾患者の疾患別頻度

  • 【2項目】
    ライソゾーム病の24%
    ファブリー病
    ポンペ病
  • 【5項目】
    ライソゾーム病の59%
    ファブリー病・ポンペ病・ゴーシェ病
    ムコ多糖症-I型・ムコ多糖症-II型

平成13年度 厚生労働省難治性疾患等政策研究事業 ライソゾーム病(ファブリー病含む)に関する調査研究班 全国患者数調査より